大石さんに聞いてみよし!『将棋の駒って、何故高価なの?』
皆さんこんにちは。
広報のFです。
よろしくお願い致します。
今年1月、大阪の八尾市で強盗事件があったのは、皆様の記憶に新しいかと思います。
事件翌日のお昼の生テレビにも取り上げられ、【なぜ将棋の駒が何百万円もするのか】【安い駒とどこが違うのか】といった質問が、テレビ制作会社さんから放送前に問い合わせがありました。
その際、高級駒の参考として画像の提供と、質問に対する解答、そして駒師のリストなどを提供致しました。
※その後の調べで事件は、経営者らが駒に掛けた保険金を騙し取ろうとした自作自演の詐欺事件として捜査中との事。
そりゃ、いくらなんでも一組500万円以上の駒なんて、おかしいなぁと思いましたけどね。でも世の中広いから、もしかして もしかすると もしかするでまんねん。
大石天狗堂も、500万円とまではいきませんが、普段から高級な将棋駒を取り扱ています。
買いに来るお客様も、ほとんどが駒の事に詳しい方が多く、あまり【何故高額なのか】を説明す事もないので、気にしていないかったのですが、ここ最近になり、藤井君ブームでこれから将棋を始める方が増え、『将棋駒に対する質問』が増えた気がします。
確かに将棋駒って、高い物は高いですよね。
将棋駒の価格の要素を大きく別けますと『駒生地』『彫(書体)』『工房(彫師)』の三つの要因で決まるかと思います。
【駒生地】
これは、駒に使われている木の種類や産地、木目の希少差などです。
将棋の駒材で最上級は黄楊(つげ)です。
黄楊(つげ/柘植/柘)は、非常に成長が遅い植物の為、木目(きめ)が大変緻密な為、しなやかでく割れにくいという特徴があります。
また【しなやかさと硬さ】を両方兼ね備えた特性から、彫刻細工に最適な素材として、重用されてきました。
例えば、つげ櫛は、折れにくい固さとしなやかさ、そして適度な油分、木製による静電抑制効果による髪へのダメージを抑え、空気中の汚れを寄せ付けない事による頭皮へのトラブル予防にもなる事から、万葉集の中にも詠まれるほど、日本人に親しまれて来ました。
また、つげの持つ【しなやかさと固さのバランスが理想的】【長い年月を経て色身や艶がだんだん良くなる】といった特徴から【夫婦の絆】【夫婦円満】を表し、縁起の良い素材としても木工細工やお守りなどに活用されてきました。
成長が遅い上に珍重される素材の為、将棋の駒として同じ木目、同じ木味のワンセットをそろえる事が困難な為、どうしても高価になってしまいます。
※黒檀の将棋駒も見た事ありますが、白い文字でした。
本黄楊(ほんつげ)は、日本で採取された黄楊を指し、東京都沖合の御蔵島で採れる黄楊を島黄楊(しまつげ・御蔵島黄楊みくらじまつげ)、九州鹿児島産黄楊を(薩摩黄楊さつまつげ)と呼び、国産黄楊では最上とされ市場で流通されています。
本黄楊以外では、東南アジア原産のシャム黄楊、雲南黄楊(当店では取扱いしていません)、楓材やアオカ、樺などの駒生地が流通されています。
木目に関しましては、虎斑(とらふ)や孔雀斑(くじゃくふ)、杢(もく)など、珍しくて希少価値の高い木目があり、複数の黄楊の木から木目をそろえる為、非常に珍重されます。
また木の目の流れ方を目(め)と呼びますが、その一つ柾目の中でも赤柾(あかまさ)・糸征(いとまさ)など、珍しい物もあります。
また、黄楊の駒は経年変化により、色身が段々と濃い飴色に変色していく為、真新しい生地材より、年数の経った中古の駒も状態が良ければ、色身が濃くなっていて高値で取引されます。
【彫(書体)】
将棋の駒はには駒表面の加工工程に差があり、その手間の差からお値段が変ります。
印刷・スタンプ(押し駒):駒生地に字を印刷、もしくは押し付けてプリントする加工方法。押し付けるので少し窪み、彫り駒の様に。
書き駒:駒生地の表面に漆で字を書きこむ。
書き手のクセが味になり、比較的お手頃な加工方法。
彫り駒:駒生地に直接字を彫り込む加工。 彫る画数の差(直線が多く簡単彫り~筆で書いたような緻密な彫り)で分けられ、普及品~中級品にこの値段が多い。
彫り埋め駒:駒の彫った部分に駒生地と”つらいち”になる位漆で埋める加工。加工の手間の差から、彫り駒より高級駒になる。
盛り上げ駒:彫り埋めよりさらに漆を重ね塗りをし、字が膨らんだように見えるほど盛上げる加工方法。最高級駒。
漆は、水彩画や水墨画、アクリル絵の具や油絵の具などと違う性質(湿式乾燥)による加工の為、時間も手間もかかります。
その為、一組の将棋駒のセットが完成するまでに手間や時間、無駄にする生地、漆も出てしまいます。
また乾燥環境により、予定日数で完成しない場合もあり、入荷予定が変る事もしばしば。
【駒工房(駒師・彫り師)】
最後に、上記の加工を行う駒職人のブランドの差です。
具体的に甲乙を付けるのは避けますが、既に駒師が死去されている場合、晩年の作品にコレクターが目を付け、高値で取引される事もあります。
上記の理由から、例えば【夭逝の天才:宮松影水作・薩摩黄楊・盛上駒錦旗書・虎斑】とかが売りに出ればウン百万で取引されるのでは無いでしょうか。
つまり将棋駒の魅力は、流れるように美しい草書体の文字、玄妙に揺蕩う山靄の様な木目、そして濡れて光る宝石の様な漆加工。
この天然木の生み出す自然美と、卓越した職人の修練による手作りの美の結晶。
それが高級将棋駒なのです‼
【シリーズ過去掲載ページ】
大石さんに聞いてみよし!『競技かるたと普通のかるたの違い?』(2018年3月7日)
大石さんに聞いてみよし!『将棋の駒って、何故高価なの?』(2018年2月22日)
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