花札の謎シリーズ!8月札『芒に月』(山に月)
皆さんこんにちは。
広報の藤澤です。
よろしくお願い致します。
久しぶりの、そして未だ触れる事のなかった8月の花札の話題です。
もうすでに9月半ばで、タイムリーではないかと思いきや、実はすすきの見ごろ(あくまで枯れ尾花のね)、旧暦の8月も現代の9月頃だったのです!!
イエスッ!!! (`^´)J
という事で、9月まっただ中なので、【タイムリーな花札のお話】を始めたいと思います。
とその前に、明後日から始まる催事情報。
甲府岡島(山梨県) 7階催事場 2016年9月15~21日
大石天狗堂が出店しますよ!
映画などの影響で、品薄状態の競技用百人一首『標準』も店頭にて販売致します。
その他にも、めったにお目に掛かれない、珠玉のかるた・花札・百人一首を是非ご覧ください。
皆様、お待ちしております。
さてさて、花札の8月札ですが、絵柄的にもっとも有名かもしれません『芒に月』。
通称【ボーズ】※スピーカーとちゃいますよ
花札の手刷りの際、版木の目に墨が固まり、細かな芒の部分が消えてしまい、黒い山になって出来上がった商品が一般化していました。
この黒い山が坊主頭の様に見える事から、坊主(ぼうず)と呼ばれるようになったようです。
このススキ(芒・薄)という植物は、秋の七草の一つとしても有名で、フサフサした穂先が銀色に輝き、風に吹かれザワザワと揺れる風景がなんとも風情がありますよね。
ススキは、一本だけですと地味でただの枯草のようですが、群生した高原などで一面ススキが生い茂り、風が吹くとそれに合わせ流れる川の様に、または地を這う動物の様に千変万化する様子は、何時まで観ていても飽きません。
関西ですと、和歌山県にある生石(おいし)高原。
奈良県と三重県の県境にある曽爾(そに)高原。
兵庫県の姫路から内陸に入っていった処にある大草原、砥峰(とのみね)高原。
その他にも、近所の河川敷や学校の周りなど、生活の中でひっそりと生育している、庶民的植物です。
昔は、このすすきやスゲなどのイネ科植物を総称して『萱(かや)』と呼び、家の屋根材として一般的にどの家も使用してきました。
稲や麦は、同じイネ科穀物ですが、水分を吸収するのに対しススキやスゲは適度な油分を含んでおり、撥水効果が高く雨水や積雪時も浸水せず、また高い保温性から冬場の室内の暖気を保ち、夏場陽射しを遮る効果がありました。
田舎の風景等の代名詞『茅葺屋根(かやぶきやね)の集落』などは、こういたススキなどの植物があったればこそです。
また、家畜の肥料としても有用で、まさに日本の生活に寄り添う花ですね。
花札の中の絵柄は、ススキの山に満月が昇った光景で描かれています。
この構図が非常に素晴らしく、わざと少しだけ左寄りに月も山も寄せ奥行や高さなどをイメージさせています。
余談ですが、京都にこの花札『芒に月』のモデルになったと言われる山が存在します。
京都の金閣寺の北に【五山の送り火】の一つ(大文字山)がありますが、この更に北側に、鷹ヶ峰(たかがみね)、鷲ヶ峰(わしがみね)、天ヶ峰(てんがみね)の三つの山があり、この三山の総称が【鷹峰三山】というそうです。
この三山の中で真ん中の山は、(鷹ヶ峯)※たかがみね→たかおかみみね→高靇峯ということで、貴船神社と縁があるという空想が働いたのは、私だけしょうか。
昔は「兀山(はげやま)」と呼ばれていた事もあったそうで、この山を北側の光悦寺の庭から鑑賞できるスポットがあります。
江戸時代、このあたりに住む琳派の画家の誰かが、この兀山を見ながら『日月山水図(じつげつさんすいず:唐画)』の様な、山と月の絵を描き上げ、後に花札の絵柄に使われるようになったのかもしれませんね。
このススキの山の形や、山の印刷色を骨刷は墨、中の下地の色は薄墨(グレー)に印刷しています。
芒に雁(すすきにかり)やその他の芒の札を坊主と呼ぶ人もいるが、『坊主』は『山に月』『芒に月』の20点札を指します。
この松に鶴(一月札)+桐に鳳凰(十二月札)+芒に月(八月札)=松桐坊主(まつきりぼうず)という役になったり、
芒に月(八月札)+菊に盃(十月札)=月見で一杯(月見酒)(月見て一杯)(月見)とも言う。
*この月見の役は、柳の札(雨・十一月札)があると消える(おそらく雨が降ると月見が出来ないからかと)
五光、四光にも使われる、重要な札です。
この八月の光札の構図は、十五夜の月見を表しており、この絵柄のようなススキ原に、ポツンと一人たたずんだりしていたら、自然と涙がこぼれるのではないでしょうか(キモっ!!)
シリーズ一覧
花札の謎シリーズ!5月札『杜若に八つ橋』(2013.7.2)
花札の謎シリーズ!赤短『あかよろし?』(2013.8.13)
花札の謎シリーズ!10月札『鹿に紅葉』(2013.10.13)
花札の謎シリーズ!11月札『柳に小野道風』(2013.10.26)
花札の謎シリーズ!12月札『桐に鳳凰』(2013.11.25)
花札の謎シリーズ!3月札『桜に幕』前篇(2014.8.19)
花札の謎シリーズ!3月札『桜に幕』後篇(2014.12.11)
花札の謎シリーズ!『こいこい』って意外とあれなのね(2015.8.28)
花札の謎シリーズ!4月札『藤に杜鵑』(ホトトギスと読みます)(2016.3.30)
花札の謎シリーズ!6月札『牡丹に蝶』前篇(2016.5.30)
花札の謎シリーズ!6月札『牡丹に蝶』後篇(2016.6.3)
花札の謎シリーズ!8月札『芒に月(山に月)』(2016.9.13)
花札の謎シリーズ!『映画サマーウォーズ』に出て来る花札!!(2017.8.18)