花札の謎シリーズ!6月札『牡丹に蝶』後編
皆さんこんにちは。
広報の藤澤です。
よろしくお願い致します。
前回の続きから始めます。
蝶についても色々調べてみると、非常に興味深い事が分ってきました。
古来、世界中に分布する昆虫の中で、蝶ほど人間の生活に寄り添いながら、嫌悪されず共存してきた昆虫も少ないのではないでしょうか。
人間の血を吸ってウィルスを広めたりする蚊や、毒を持つサソリや蜂のような、人に害をなす虫ではないからでしょうね。
それに翅が美しく、飛び方の儚さや艶やかさが人に好まれる要因でもあるのでしょう。
しかし一方で、ヒラヒラと飛ぶ姿が(幽霊)(霊魂)(死の象徴)というイメージを持たれてきました。
古代ギリシャでは、霊魂(プシュケ)と表現されていたようです。
平安時代中期になると、有識紋様に蝶を本格的に取り入れらるようになり、鎌倉時代初期には平氏が家紋として使用するようになりました。
さらに古くは、源氏の鎧などにも蝶の意匠が使われていました。
前述の近衛家は、清和源氏の流れをくむ家柄で、おそらく蝶紋から牡丹紋に鎌倉前期に替えたのでしょうね。
牡丹文や蝶紋を使用していた源氏、蝶紋を使用していた平氏は、花札の6月札の中で、夢のコラボをしていました。
『すごいぞ花札!!!!』
さらに中国では、蝶を『ほう』と発音するそうで、八十歳を意味する漢字と同じ読み方をする事から、長寿吉祥の象徴と考えていたようです。
そして【卵-幼虫-蛹-羽化-成虫】と変態する様子から、【回生】【復活】の象徴とされてきました。
戦国時代には、兜の前立てに蝶の意匠を使う武将もいたようです。
戦で死と隣り合わせだった戦国時代。
鎧兜は身を守る装備としてだけでなく、死ぬ時の死装束にもなる事から、武将のこだわりが込められていたようです。
さらに戦場で、家来に自分の無事な姿を見せ、士気を保つにも、独特の前立ては、見間違わないようにする為に必要だったようです。
自分が戦場で躍した際、敵味方の武将達が証人でした。
彼らが
『お‼‼ あの変わった前立ての武将は、やけに強えェェなァ。いったいあれは誰だ?』とか、
『おお!!! あそこで敵をなぎ倒すは、〇〇家の〇〇ではないか!!!! さすがじゃのう!』
と言う時に、前立てが目印になったようです。
その前立てに蝶を用いるのは、死後【回生】【復活】をのぞんでいたのか、蝶のように華麗に戦場を飛び回るがごとく活躍することを望んでいたかは、夢のまた夢…。
【銀溜漆蝶形兜】の兜なんかは、個人的にすごくカッコイイと思います。
この『死んでも生き返る』『新しく生まれる』『復活して元に戻る』=つまり【再生】や【永遠】の象徴という事で、吉祥のシンボルだったのではないでしょうか。
【復活の象徴】の蝶
【花の王】の牡丹
二つを合わせる事で、非常におめでたい題材ですよね。
今季節、牡丹の近くに蝶が飛んでいないか、探してみて下さい。
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